短距離走から長距離走のチャンピオンへ 台湾の洋上風力発電がアジア太平洋地域のリーダーへ向けて歩みを進める

2025/06/02

インタビュー 台湾洋上風力発電産業協会(TOWIA)新任会長 林靖苹氏

インタビュー 台湾洋上風力発電産業協会(TOWIA)新任会長 林靖苹氏

過去10年間、台湾の洋上風力発電産業は急成長を遂げ、設置容量は300万キロワット(GW)を突破し、世界の上位にランクインしている。産業が新たな段階に進む中、台湾の洋上風力発電産業にとっての次なる重要課題は、急速な拡大から長期的なリーダーシップへと転換し、アジア太平洋地域で競争優位を維持することである。「WindTAIWAN」では、台湾洋上風力発電産業協会(TOWIA)の新会長、林靖苹氏にインタビューを行い、台湾の洋上風力発電の現状、課題、将来展望について深く掘り下げて分析した。

注目を集めるグリーン電力 急増する需要に追われる再生可能エネルギー市場

台湾の洋上風力発電は急速に発展しており、2024年末までに374基の洋上風力発電機が設置され、総設置容量は3.04百万キロワット(GW)に達する。そのうち367基がすでに送電網に接続され、発電を行っており、世界第7位の規模となっている。2025年には新たな風力発電所が完成し、送電網に接続される予定であり、台湾の世界的な洋上風力発電産業での順位はさらに上昇する見込みである。

台湾の洋上風力発電産業の急成長について、林靖苹氏は「台湾はわずか10年で、デンマークが30年かけて完成させた設置容量を達成しました。このスピードは驚異的であり、特にパンデミック時における絶え間ない発展は記録的なものです。私たちはこれを政府と産業界の協力によって成し遂げられた成果として誇りに思うべきです。」と述べ、大きな成功と捉えている。

しかし、グリーンエネルギー建設は急速に進んでいるものの、民間需要も増加しており、重要と供給のギャップを早急に埋め合わせる必要がある。気候組織(The Climate Group、TCG)およびカーボン・ディスクロージャー・プロジェクト(CDP)が提唱する国際的な再生可能エネルギーイニシアティブである「RE100」は、世界中の440社以上の企業から支持を受けており、再生可能エネルギーでの生産に賛同している。そのうち、アジア太平洋地域に本社を置く企業は約200社、台湾に本社を置くか、台湾で事業を展開している企業は120社にのぼり、GoogleやMicrosoftなどの多国籍企業も含まれている。

少し前に、気候組織(TCG)と中華経済研究院(CIER)が共同で発表した「RE100 台湾2024報告書」では、RE100企業がグリーン電力を調達する際に直面する現状と課題を指摘した。企業は2050年までに全ての電力をグリーン電力に切り替える必要があり、それが再生可能エネルギー市場における供給不足やコスト競争力の欠如を反映していることを示した。林靖苹氏は、この問題の背後には、再生可能エネルギーがもはや単なる政策目標や企業のコミットメントにとどまらず、産業の国際競争力に関わる厳格な要求であることが明確に示されているという点を指摘した。このため経済界からは「グリーン電力が買えない、買いにくい」という声も上がっている。

「RE100 台湾2024報告書」では、台湾の再生可能エネルギー市場におけるグリーン電力の供給不足と価格の高騰という二重の課題に直面しており、再生可能エネルギーの多くが台湾電力会社(台電)によって購入されていると指摘している。グリーン電力価格高騰の原因の一つとして、固定価格買取制度(Feed-In Tariff、FIT)の設定が高すぎることや、再生可能エネルギーの建設コストも依然として高いことが、価格をさらに押し上げていると述べられている。


固定価格買取制度は、台湾の再生可能エネルギーの初期段階において重要な制度であり、政府は国際的な経験を参考にして、高コスト、高リスク、ハイテクである再生可能エネルギー開発に関心のある業者に対し、インセンティブとして固定価格買取を提供し、早期に投資するよう促進した。固定価格買取制度では、固定金額や一時的な補助金とは異なり、政府や台湾電力が一定期間内に特定の料金でグリーン電力を購入する。そして、産業が成熟するにつれて、市場は徐々に入札方式に競争入札方式に移行し、価格は市場のメカニズムに戻るようになる。


林靖苹氏は実際、固定価格買取制度は台湾の洋上風力発電を定着させるために重要な要素の一つであったと考えている。初期段階で商業的な実行可能性を高めるためには、安定した長期の購入保証が必要であり、それがなければフェーズ2の潜在的な開発場所の開発はほぼ不可能だったと述べている。


固固定価格買取制度は、台湾の洋上風力発電産業の最初から今日の成果を成し遂げるまで、欠かせない役割を果たしてきた。林靖苹氏は、オーステッド・エナジーの900MW大彰化東南・西南フェーズ1の洋上風力発電所が、このインセンティブの下で早期開発に投入され、フェーズ2の選定を通過し、接続容量を確保した事例を挙げている。このインセンティブにより、地元の産業チェーンやインフラの整備が促進された。現在、オーステッド・エナジーが建設中の920MW大彰化西南フェーズ2および西北部の洋上風力発電所は、フェーズ2の競争入札を通じて接続容量を確保した風力発電所であり、前述の900MWの風力発電所と統合開発されており、開発と運用保守における相乗効果を生み出し、規模の経済を実現している。これにより、今後の発展に有利な条件が整っている。


台湾の洋上風力発電産業は、徐々に固定価格買取制度から市場取引の仕組みへと移行しつつある。林靖苹氏は、企業による再生可能エネルギー電力購入契約(CPPA)の推進により、現在の洋上風力発電の購入先が台電から、より強いグリーン電力需要を持つ多くの企業による直接購入へと徐々に移行していると語った。最近、渢妙風力発電所は1,000億台湾ドルの資金調達に成功し、6社の企業とCPPAを締結した。これにより、台湾のグリーン電力市場が新たな段階に進んでいることが示され、金融業界もこのような販売モデルに自信を持っていることが伺える。


このコンテンツはWindTAIWANにて公開されたものであり、

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