フランス、浮体式HVDCで次世代洋上風力の主導権狙う――「RHODÉ」計画始動、2040年市場を見据え産業基盤構築へ
2026/6/2

半潜水式プラットフォーム(画像提供:RTE – MIP Agency)
フランスのエネルギー・海洋工学関連7機関は、深海向け浮体式洋上風力発電の送電インフラ開発を目的とした大型研究開発プロジェクト「RHODÉ(Raccordement HVDC Offshore Distant Électrique)」を始動した。フランス政府の産業政策「France 2030」の支援を受け、総額1,600万ユーロ(約26億円)の助成金が投入される。
プロジェクトには、Chantiers de l’Atlantique、France Energies Marines、Fondation OPEN-C、GE Vernova、Nexans、RTE、SuperGrid Instituteが参画。洋上構造物、送電網、海底ケーブル、HVDC変換設備、環境評価など、浮体式洋上風力のバリューチェーン全体を網羅する体制を構築した。
「浮体式変電所」が次世代洋上風力のボトルネックに
欧州では洋上風力発電の開発海域が年々沖合へと拡大している。特に浮体式洋上風力は、水深100メートルを超える大水深海域への展開を可能にする技術として期待されているが、発電設備の大型化に伴い、送電網整備が新たな課題として浮上している。
従来の固定式海上変電所は、水深の深い海域では建設コストや施工リスクが急増する。このため、変電設備そのものを浮体化する「浮体式洋上変電所」が、次世代洋上風力市場を支える中核インフラとして注目を集めている。RHODÉは、この分野における技術的空白を埋めるプロジェクトとして位置付けられている。
320kV・525kV級の浮体式HVDCシステムを開発
RHODÉでは、320kVおよび525kVの浮体式HVDC送電システムの設計・実証を進める。特に変圧器、ガス絶縁開閉装置(GIS)、洋上AC/DC変換設備、動的(ダイナミック)HVDC海底ケーブルといった主要技術の開発・検証が中心となる。最終的には2種類の浮体式変電所コンセプトを完成させる計画だ。
プロジェクトでは設計・数値シミュレーションに加え、実験室試験、環境影響評価、縮尺模型による水槽試験、さらには海上実証まで実施する。設置・運用・保守・撤去に至るライフサイクル全体の実現性を検証する点も特徴である。
技術開発の先にある「フランス産業戦略」
RHODÉが掲げる目標は、単なる技術実証にとどまらない。
コンソーシアムは、①高出力浮体式HVDC接続技術の確立、②フランス国内における浮体式送電インフラ産業の育成、という二つの戦略目標を明示している。特に後者については、将来的な輸出市場も視野に入れた「フランス発の産業エコシステム構築」が重要なテーマとなっている。
現在、洋上風力市場では風車メーカーや浮体基礎メーカーへの注目が集まる一方、HVDC送電設備や海底ケーブルなどの電力インフラ分野は供給企業が限られている。フランスはNexansやRTE、Chantiers de l’Atlantiqueといった国内企業群を軸に、この高付加価値分野で競争優位を確立する狙いがあるとみられる。
発電設備から送電網へ――競争領域が変化
洋上風力産業はこれまで「大型風車の開発競争」が中心だった。しかし、2040年以降に想定されるGW級の浮体式洋上風力時代では、発電設備以上に送電・系統接続技術が事業成否を左右する可能性が高い。
RHODÉは、研究開発段階と商業導入段階をつなぐ「失われたリンク(Missing Link)」として位置付けられており、フランスが浮体式洋上風力の次なる競争領域である送電インフラ分野の主導権獲得を目指す国家プロジェクトといえる。2040年以降の世界市場を見据えた動きとして、その成否は欧州の洋上風力産業全体にも大きな影響を与えそうだ。
参考資料:Nexans,
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