海底ケーブル、世界の新たな戦場に――各国が防衛体制を強化

2025/08/01

インタビュー:台湾地区総経理 黄意文氏

画像出典元:freepik


イギリス議会の国防委員会は最新の報告書で、イギリス政府に対し、「多機能海洋監視船(MROSS)」の2隻目の建造を早急に進めるよう求めた。これは、敵対国家による海底インフラへの破壊行為を抑止・対応するための措置。報告書は、6年間にわたって調査された「グレーゾーン活動(grey zone activities)」に基づくもので、海底ケーブルの切断やパイプラインの損壊、さらに2022年のウクライナ戦争以降にヨーロッパ各地で頻発するサイバー攻撃などが対象となっている。


2022年にバルト海で発生したNord Streamパイプライン破壊事件は、欧州各国に海底インフラの脆弱性を強く印象づけた。報告書によれば、イギリスが現在保有している海底作業対応可能な艦船は、2023年10月に就役した英海軍補助艦「Proteus」1隻のみ。国防委員会のタン・デシ委員長は、「1隻では継続的かつ多様化するグレーゾーンの脅威には対処しきれない」と指摘。2隻目のMROSSはイギリスおよび同盟国にとって抑止力となり得るとし、繰り返される海底ケーブルへの損害は、重要インフラ保護の緊急性を示していると訴えた。また、ロシアの破壊活動を牽制するためにも、イギリス主導の合同遠征軍には追加の対応能力が求められるとしている。


一方、中国が開発したとされる新たなツールが注目を集めている。2024年3月22日付の『サウスチャイナ・モーニング・ポスト』によれば、中国は水深4,000メートルの深海でも太い海底ケーブルを切断可能な技術を保有しており、その破壊力は従来技術の2倍にのぼるという。こうした技術の存在は、世界中の海底インフラにかつてないレベルの脅威をもたらしており、防御および復旧のリソース強化が急務となっている。



これに対し、北大西洋条約機構(NATO)はノルウェーのロボット企業「Kongsberg Ferrotech」への出資を通じ、海底インフラの保護強化を進めている。NATOは同社と連携し、海底修復ロボットの開発、海底インフラの安全性に特化したセンターの設立、無人システムの演習実施、さらには空海監視体制の整備など、多角的な対策を講じている。


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