政府、洋上風力支援を抜本見直し 収入保証を最大3.5倍へ 6月の公募制度改革に続く追加対策
2026/7/20

METI、制度改革を加速 「制度」と「収益」の両面から支援
経済産業省(METI)は7月14日、洋上風力発電事業を対象とする「長期脱炭素電源オークション」の収入保証額を大幅に引き上げる方針を示した。2026年度入札から、第2・第3ラウンドで選定された6海域を対象に、1kW当たりの収入保証上限を最大約70万円とし、従来の20万円から約3.5倍へ拡大する。
今回の措置は、6月に実施した洋上風力公募制度(ラウンド制度)の見直しに続く追加支援策であり、政府は制度設計と事業収益の双方から市場環境の改善を進める姿勢を鮮明にした。
三菱商事連合撤退を受け、制度改革が本格化
日本の洋上風力市場では2025年、三菱商事を中心とする企業連合が、第1ラウンドで落札した秋田県・千葉県沖の3案件から撤退を表明した。
背景には、世界的なインフレによる資機材価格の高騰、円安、金利上昇、人件費増加などがあり、当初想定していた事業収支が大きく悪化したことがある。
この撤退を受け、政府は洋上風力政策全体の見直しに着手した。
6月には「公募制度」を改正
その第一弾として、経済産業省と国土交通省は6月5日、「一般海域における占用公募制度の運用指針」を改訂した。
今回の改訂では、価格競争を重視してきた従来制度から、事業実現性や事業継続性をより重視する制度へと転換が図られた。
6月に改訂された「一般海域における占用公募制度の運用指針」では、公募開始前のサウンディング導入や、公募条件の柔軟化に加え、インフレやサプライチェーンの変化を踏まえた制度運用を進める方向性が盛り込まれた。審査についても価格競争だけではなく、事業実現性や継続性をより重視する考え方へと見直されている。
政府は、価格競争だけを優先した結果、事業継続が困難になることを避けるため、「長期的に運転できる案件」を重視する方向へ政策を転換した。
今回は「収益面」を支援
今回発表された長期脱炭素電源オークションの見直しは、その制度改革を補完する第二弾の政策となる。
経済産業省は、
- 九州:約70万1,172円/kW
- 東北:約40万8,857円/kW
を収入保証の上限として設定した。
従来は全国ほぼ一律20万円だったが、海域ごとの風況や設備利用率を考慮した制度へ変更する。
実際の保証額は入札結果によって決定されるが、収入の予見性を高めることで金融機関からの資金調達もしやすくなると期待される。
FIPとの併用も認める方向へ
政府は制度改革をさらに進めている。
従来、長期脱炭素電源オークションはFIP制度との併用が認められていなかった。
しかし三菱商事連合の撤退後、経済産業省は2025年11月、第2・第3ラウンド案件について、一部補助制度との併用を認める方向へ制度を変更した。
さらに今後予定される第1ラウンド3案件の再公募では、FIP制度も活用しながら事業リスクを低減する方針としている。
依然として残る日本特有の課題
もっとも、事業者からは今回の支援策を評価する一方で、「採算に十分な余裕が生まれる水準ではない」との声も聞かれる。
日本では、洋上風力の事業環境は依然として厳しい。欧州のように整備されたサプライチェーンや港湾インフラが十分ではないうえ、海底地盤が複雑で、台風や地震への対応も必要となる。このため、基礎工事や建設コストが膨らみやすく、施工を担う人材の不足も事業採算を圧迫する要因となっている。
政府も同日の会合で、洋上風力は「コスト見通しを立てにくい事業環境」にあると認めている。
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今回の政策は単なる補助金拡充ではない。
6月の「制度改革(公募制度)」と、7月の「収益支援(長期脱炭素電源オークション)」は、日本政府が洋上風力政策を抜本的に見直す一連の改革として位置付けられる。
これまでの制度は、価格競争を通じて低廉な電力供給を目指すことに重点が置かれてきた。しかし、世界的な建設コストの高騰により、その前提は大きく揺らいだ。
政府は現在、「安く作る」ことよりも、「最後まで建設・運転できる事業」を重視する方向へ政策の軸足を移しつつある。
もっとも、今回の支援だけで日本市場の競争力が回復するかはなお未知数だ。サプライチェーンの国内整備や港湾インフラ、人材育成、保険制度など、事業環境全体の改善が伴わなければ、海外投資家や風車メーカーの投資判断を大きく変えるまでには至らない可能性もある。
今後予定される第1ラウンド案件の再公募は、日本の洋上風力政策が真に転換点を迎えたかどうかを占う試金石となりそうだ。



