Ørsted、台湾で920MW洋上風力が完工 韓国では1.4GW計画を縮小、アジア投資を選別
2026/9/1
デンマークの再生可能エネルギー大手Ørsted(オーステッド)は今日(1日)、台湾中部の彰化県沖で建設していた総出力920メガワット(MW)の「大彰化西南第二段階・西北洋上風力発電所」が完成し、運転・保守段階に移行したと発表した。既に稼働する900MWの風力発電所と合わせ、大彰化洋上風力発電群の総出力は1.82ギガワット(GW)に達した。
一方、韓国・仁川沖で計画する1.4GWの洋上風力事業では、採算性の悪化を理由に開発活動を縮小する。台湾で大型案件を完成させる一方、韓国では計画の再設計に着手する。世界的な建設費や金利の上昇が続くなか、Ørstedがアジアでも案件ごとの収益性を厳しく見極める姿勢が鮮明になっている。
台湾最大級、66基が稼働
Ørstedは今日(1日)、台湾の台中港で完工・運転保守開始を記念する式典を開いた。卓栄泰行政院長や台湾経済部の頼建信次長、地元漁業団体の代表者らが出席した。
完成したのは「大彰化西南第二段階(Greater Changhua 2b)」と「大彰化西北(Greater Changhua 4 - Northwest Offshore Wind Farm)」の2事業。彰化県沖約35~60キロメートルに、独シーメンス・ガメサ(Siemens Gamesa)製の出力14MWの大型風車を計66基設置した。
2025年2月に洋上工事を開始し、同年7月に最初の風車が台湾の電力網への送電を始めた。2026年1月までに全風車の設置を終え、その後、試運転や系統接続作業を進めていた。
今回の920MWに、既に運転する900MWの「大彰化東南・西南第一段階(Greater Changhua Southeast and Southwest Phase 1)」を加えると、Ørstedが彰化沖で運営する洋上風力発電所は計1.82GWとなる。年間発電量は台湾の約200万世帯分の電力使用量に相当するという。
発電した電力の大半は、台湾積体電路製造(TSMC)に長期供給する。ØrstedとTSMCは2020年、20年間のコーポレート電力購入契約(PPA)を締結しており、台湾の半導体産業をはじめとする企業の脱炭素化を支える。
大彰化4(Greater Changhua 4)については、台湾の国泰人寿保険(Cathay Life Insurance Co., Ltd.)が50%を出資している。Ørstedは運転・保守を担い、台湾での長期的な事業基盤を維持する。
Ørstedのグループ社長兼最高経営責任者(CEO)、ラスムス・エルボー氏(Rasmus Errboe)は「大彰化西南第二段階・西北洋上風力発電所の完成は、大規模洋上風力事業を確実に遂行する当社の能力を示すものだ」と述べた。今後も洋上風力の競争力向上と長期的な価値創出に取り組む考えを示した。
同事業の完工は、Ørstedが世界で進める計8.1GW規模の建設計画の重要な節目にもなる。
台湾政府、35年までに最大18GW追加
式典に出席した卓行政院長は、政府が2026~2035年の洋上風力中長期計画を継続し、今後15~18GWの開発容量を追加する方針を示した。
政策の明確化、国内産業の育成、グリーンファイナンスの整備、行政手続きの効率化を4本柱に、再生可能エネルギーの導入を拡大する。
経済部の頼次長は、台中火力発電所の新1号機や興達発電所の新設設備などを含め、計5.2GWの電源が今後順次、供給力に加わるとの見通しを示した。
台湾政府は、半導体の供給網や人工知能(AI)向けデータセンターの拡大を見込み、今後10年間の電力需要の年平均伸び率を2.5%に引き上げている。洋上風力や太陽光発電の拡大によって電源を多様化し、輸入液化天然ガス(LNG)への依存を抑える狙いもある。
韓国では投資基準満たさず
台湾での事業拡大とは対照的に、Ørstedは韓国で開発判断を慎重化している。
同社は仁川市の沖合約70キロメートルで、800MWと600MWの2つの洋上風力発電所を計画している。合計出力は1.4GWで、既に韓国政府から発電事業許可を取得している。
ただ、Ørstedのアジア太平洋部門を統括するペール・マイナート・クリステンセン(Per Mejnert Kristensen)CEOは社員向け文書で、「過去1年間に外部要因によって仁川プロジェクトのリスクが上昇し、事業性が低下した」と説明した。
現行計画のリスクと収益性では、韓国政府の洋上風力入札に参加するために必要な社内の投資基準を満たせないと判断した。次回入札への参加を見送り、韓国とグローバル組織の開発人員も一部削減する見通しだ。
ただ、Ørstedは韓国市場から撤退するわけではない。設備構成や事業スキームを見直す「再構成プロセス」に入り、コスト競争力と長期的な事業性の改善を探る。
韓国は2022年以降、洋上風力の固定価格契約を対象とする競争入札を拡大し、これまでに約5.9GWを選定した。2026年上半期の入札でも着床式約1.2GW、浮体式約530MWが落札され、アジアの有力市場として存在感を高めている。
一方で、複雑な許認可や系統接続、漁業者との調整、国内供給網への貢献などが事業者の負担となっている。入札価格の競争が強まるなか、資材価格や金利の上昇分を売電価格に反映できるかも課題だ。
実績と収益性で市場を選別
台湾では、Ørstedが2010年代から進めてきた大彰化風力発電群が完成し、長期PPAや現地金融機関の出資を通じて収益基盤を確保した。既に整備した台中港の拠点や運転保守体制も活用できる。
これに対し、韓国の仁川事業は今後の入札で売電条件を確保する必要があり、最終投資決定までの不確実性が大きい。
Ørstedによる台湾での大型案件の完成と韓国での計画縮小は、単純なアジア市場からの後退ではなく、投資回収の確度に応じて経営資源を選別する動きといえる。急拡大を目指すアジアの洋上風力市場でも、政策目標だけでなく、事業者が投資判断できる収益環境を整えられるかが市場成長を左右する。
参考:Ørstedによる920MW風車設置完了の発表、Greater Changhua 2b and 4の初送電、大彰化4への国泰人寿保険の出資、RECHARGE
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