緑の野心と現実のはざまで――オーストラリアのエネルギー転換が台湾に示すもの

2025/10/7

経済部インタビュー:豪州弁務処商務部副代表 クリストファー・リム(林明皓)


2024年10月1日午前11時30分、オーストラリアの電力網が歴史的な瞬間を迎えた。再生可能エネルギーの電力供給比率が73.87%に達したのである。これは実験でも政府主導のモデルケースでもなく、2500万人の暮らしを支える国家電網のリアルタイムな数値だった。


かつて化石燃料輸出で経済を築いたこの国が、いまやわずか数年で再生可能エネルギーの浸透率7割超を実現した。その目標は2030年までに82%へとさらに引き上げられている。これは単なるエネルギー政策ではなく、工業革命以来最大級の経済転換であると、豪州弁務処の林明皓副代表は語る。


だが、台湾にとってこのエネルギー革命は「遠くの話」ではない。地理的にはわずか7000キロの距離、経済的にはオーストラリアの重要なエネルギー輸入国として深く関わっている。台湾もまた、脱炭素とエネルギー自立のはざまで苦闘する一国として、この変革に学ぶべき点は多い。


オーストラリアの82%目標達成には、年間約6GWという前例のない発電容量の増設が必要とされている。しかし、2024年の実績はわずか2GW。公的支援に依存した旧来の補助制度では限界が見え始め、政府は大規模な投融資政策「Future Made in Australia(FMIA)」を打ち出した。227億豪ドル(約4500億台湾元)を投じて、水素、グリーンメタル、再エネ、重要鉱物といった戦略分野への支援を拡大する構えだ。


林明皓は政策のジレンマを率直に語る。再エネの拡大と電力価格の安定、電網の再設計と国民負担の抑制。すべてを両立させることは困難だが、明確な方向性とリスク分担の仕組みがなければ、投資も加速しない。


実際、連邦政府と各州政府の連携も成果を生んでいる。南オーストラリア州は2027年の100%再エネ達成を目指し、タスマニア州は2030年に150%(余剰電力の輸出を含む)を掲げ、ビクトリア州も65%目標に向けて邁進中だ。


一方、Clean Energy Councilの分析によれば、すでに運転中・建設中のプロジェクトをすべて合わせても、2026年までに到達できる再エネ比率は46.2%。残る35.8%は、今後数年の投資・建設次第という厳しい現実が立ちはだかる。


林明皓は言う。「このエネルギー転換は直線的に進まない。むしろ常に揺れながら進むものだ。しかし重要なのは、最終的に目指す場所を見失わないことだ。」


再生可能エネルギー比率82%。それは単なる数値ではなく、国家の構造を根底から組み替える壮大な挑戦であり、グリーン成長を可能にする財政設計と社会合意の結晶でもある。13%の再エネ比率にとどまる台湾がその未来を描くには、オーストラリアの実例が示す教訓と現実、そして政策の柔軟さが不可欠となる。



このコンテンツはWindTAIWANにて公開されたものであり、

ENERGYNIPPONとのコラボレーションにより共有されています。

前のページに戻る
住友電工、英SSENとHVDC海底ケーブルで長期提携 「Shetland 2」始動、英国送電網強化へ
By info 2026年7月14日
住友電工は英国SSEN TransmissionとHVDC海底ケーブルの長期フレームワーク契約を締結。「Shetland 2」を皮切りに英国送電網整備へ参画し、700億円を投じるスコットランド新工場を拠点に欧州市場での事業拡大を目指す。
ベスタス、北九州に洋上風力ナセル組立拠点 GX補助金活用、日本製造へ布石
By info 2026年7月13日
ベスタスは経産省のGXサプライチェーン支援事業に採択され、北九州市に洋上風力ナセルの最終組立拠点を整備する。総事業費26億円、補助金13億円を活用し、日本の洋上風力サプライチェーン強化と国内製造基盤の構築を目指す。
EDF、北米再エネ事業をKKRへ売却 42億ドル、財務改善と成長投資を両立
By info 2026年7月10日
EDFは北米の再生可能エネルギー事業を約42億ドルでKKRへ売却する契約を締結した。AIによる電力需要拡大を背景に、KKRは再エネ分野で過去最大の単独投資を実施。EDFは資産入れ替えを通じて低炭素電源への投資を加速する。