トルコ、初の洋上風力1GW入札案を公表 事業撤退オプション導入で投資リスク軽減へ
2026/6/30

アルパルスラン・バイラクタル・トルコ・エネルギー天然資源相(写真:トルコ・エネルギー天然資源省)
トルコ・エネルギー天然資源省は、同国初となる総容量1GW規模の洋上風力発電入札「YEKA OWPP-2026」のドラフト入札要項を公表した。開発事業者に対し、一定条件下で事業区域を返還できる制度を盛り込んだほか、ネガティブビッド(負担金方式)を採用する可能性も示しており、新興市場としては柔軟性の高い制度設計が注目されている。
今回の入札では、落札事業者に対して送電網接m続権と洋上風力区域の開発・運営権を49年間付与する。さらに、固定価格による支援制度(CfDに類似)の対象価格は70~110ドル/MWhに設定された。
最低価格となる70ドル/MWhまで複数事業者が入札した場合には、追加の競争入札として海域利用料に相当する「Contribution Fee(負担金)」を提示するネガティブビッド方式へ移行する仕組みとなる。
風況や海底条件次第で事業返還も可能
今回のドラフト要項で特徴的なのは、開発事業者に一定条件下でプロジェクトを返還する権利を認めた点だ。
風況調査の結果、設備利用率(Capacity Factor)が40%を下回ることが判明した場合や、海底地盤・地質調査の結果、建設が著しく困難と判断された場合には、落札した海域を返還できる。
近年、ドイツなど成熟市場ではネガティブビッドによって高額な負担金を提示した事業者が採算性悪化に直面するケースもみられており、事業返還を認める制度は開発リスクを抑える措置として市場関係者の関心を集めそうだ。
また、49年間という長期の海域利用権も、事業期間を通じた投資回収を見据えた制度として、事業者にとって魅力となる可能性がある。
2018年の入札延期を踏まえ制度を見直し
トルコ政府は2018年にも1.2GW規模の洋上風力入札を計画したが、高い国産化要件や80ドル/MWhという価格上限が参入障壁となり、入札は延期されていた。
その後、トルコ政府はデンマーク・エネルギー庁やドイツ経済・気候保護省との協力体制を構築したほか、World Bank(世界銀行)の支援を受け、EU資金を活用した洋上風力開発プログラムも進めている。
エーゲ海4海域を候補地に選定
エネルギー天然資源省は今年5月、初回入札の候補地としてエーゲ海沿岸の4海域を選定した。
対象となるのはサロス湾(Saros Bay)周辺、ギョクチェアダ島(Gökçeada)沖、ボズジャ島(Bozcaada)沖、エドレミト(Edremit)沖で、いずれも水深60メートル未満の着床式洋上風力に適した海域とされる。
世界銀行によれば、これら海域の平均風速は約7~8m/sと見込まれている。一方、トルコ周辺海域の多くは水深が深く、将来的には浮体式洋上風力の導入余地も大きいとみられる。
4海域はいずれも最大都市イスタンブールへのアクセスにも優れ、送電インフラとの接続面でも優位性が期待される。
2035年までに5GW導入目標
ドラフト要項では入札実施時期は明示されていない。
一方、Turkish Wind Energy Association(TWEA)のイブラヒム・エルデン会長はこれまで、初回入札は2026年後半から2027年初頭に実施される可能性があるとの見方を示している。入札規模は最低1GWで、15~20MW級大型風車の採用が想定されている。
トルコ政府は2035年までに洋上風力5GWの導入を目標に掲げる。一方、陸上風力では2025年に約2.1GWの新規設備を導入し、欧州ではドイツに次ぐ規模となった。
また、国内ではEnercon、Nordex、Siemens Gamesaが生産拠点を構えているほか、中国メーカーも現地生産の検討を進めており、風力サプライチェーンの集積も進みつつある。
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トルコが今回提示した制度は、成熟市場で課題となっている過度な価格競争や事業採算性の悪化を踏まえ、リスク分担を重視した制度設計が特徴といえる。特に事業返還オプションの導入は、初期段階の市場における投資判断を後押しする仕組みとして注目される。
一方で、支援価格の下限到達時にはネガティブビッドを実施するため、競争激化による収益性への影響は依然として残る。トルコは欧州と中東を結ぶ地理的優位性に加え、既存の風車製造基盤も備えており、今後は着床式から浮体式洋上風力への展開も視野に、新たな洋上風力市場として存在感を高める可能性がある。
参考資料:Turkish energy and natural resources ministry, Recharge



