日本海ルート送電計画、事業計画提出を1年延期
資金調達難で2030年度完成に遅れ
2026/3/9

(画像:日本海ルートの事業者公募の4社)
日本海ルートは、再生可能エネルギーのポテンシャルが高い北海道と本州を結ぶ地域間連系線の中核プロジェクトの一つと考えられている。北海道から新潟県まで約800キロメートルを海底ケーブルで接続し、新潟を経由して首都圏へ再生可能エネルギー電力を送る構想である。送電容量は200万キロワットを想定しており、単一の送電線としては国内最大規模となる見通しだ。
北海道は風力などの再生可能エネルギー資源が豊富な一方、電力需要が限られるため出力制御のリスクが指摘されてきた。よって、日本海ルートの整備により、本州の需要地へ電力を送ることで再エネ電源の有効活用が期待されている。
しかし、事業費は最大で約1.8兆円と見込まれ、国内の送電インフラ投資としては異例の規模となる。政府が進める他地域の連系線増強計画が5000億円未満であるのに比べても、突出した投資額だ。このため、制度設計や資金調達の面で実現性を懸念する声が以前から出ていた。
事業主体となるのは、東京電力ホールディングス、Jパワー、東北電力、北海道電力の送電子会社によるコンソーシアム。2025年初めに事業者として認定された際には、巨額投資の回収を確実にするため、政府による制度支援を求める12項目の条件書を提出していた。条件が満たされない場合は「辞退もあり得る」とする異例の内容だった。
連系線事業では、事業収益を担保に資金を調達するプロジェクトファイナンスが前提となるケースが多い。金融機関からの融資を確保するためには、長期的な収益見通しや制度の安定性を示すことが不可欠となる。
こうした状況を踏まえ、政府は支援制度の見直しを進めた。主な施策の一つが、建設段階から資金回収を可能とする仕組みの導入である。従来、連系線の収入源となる託送料金や再エネ賦課金は運転開始後でなければ回収できなかったが、新制度では工事開始時点から一部を前倒しで回収できるようにした。
また、地域間の電力市場価格差から生じる利益を原資として、政府資金を事業者に貸し付ける制度も導入。民間金融機関による融資を後押しする仕組みを整えた。資材価格の高騰や工期遅延によるコスト増への対応策についても、今後検討が進められる見通しだ。
もっとも、事業者側は依然として慎重姿勢を崩していない。コンソーシアムはまず送電ルートや設備仕様などの技術計画を提出し、最終的な事業計画は2026年末までに改めて提出する方針とした。
さらに、地域との調整も大きな課題となる。海底ケーブルの敷設ルート周辺には約100の漁業協同組合が存在し、地元との合意形成が不可欠だ。Jパワーの加藤英彰常務は「地元との調整が重要な課題であり、理解促進に向けて政府の関与も必要になる」と指摘している。
政府の想定では、日本海ルートの工期は6〜10年程度。仮に2020年代後半に着工した場合、当初目標としていた2030年度の完成は大幅に後ろ倒しとなる可能性が高い。
日本政府は2040年度までに電源構成に占める再生可能エネルギー比率を4〜5割に引き上げる方針を掲げており、その実現には地域間連系線の増強が不可欠とされる。日本海ルートの進展は、今後の大規模系統投資のモデルケースになるとの見方もある。
電力インフラ分野の資金調達に詳しいKPMG FASの鵜飼成典執行役員パートナーは「プロジェクトファイナンスで約2兆円規模の資金を民間企業だけで確保するのは、政府の債務保証があっても容易ではない」と指摘。そのうえで「政府出資など、民間の負担を軽減するさらなる支援策が必要になる可能性がある」との見方を示している。
資料参考:NIKKEI GX



